自社でAI化できる仕事を探す方法|帳票・転記・定型文・確認作業から考える

会社でAIを導入しようとしても、

「何をAI化すればいいか分からない」
「ChatGPTを入れたものの、メールを書くくらいしか使っていない」
「うちにも自動化できる仕事はある?」

ということがあります。

結論からいうと、AI化できる仕事を探すときは、「AIで何ができるか」から考えない方が見つけやすいです。

まず社内にある、

帳票
転記
定型文
確認作業

を探します。

たとえば、

紙の注文書をExcelへ入力する。
システムの数字を別のExcelへ転記する。
毎回似たメールを書く。
長い報告書から必要事項を探す。
書類を一枚ずつ確認する。

このような仕事です。

そして、

文章なら生成AI。
紙・PDFならOCR。
決まった転記ならRPA・Power Automate。
データ集計ならExcel・Power Query。
システム同士をつなげられるならAPI。

と、仕事に合う方法を選びます。

つまり最初にすることは、

AIツールを探すことではなく、人が繰り返している作業を探すこと

です。

まず社内で「何度も書いているもの」を探す

最初に見つけやすいのが帳票です。

たとえば、

日報
作業報告書
点検票
事故報告
見積依頼
注文書
申込書
顧客対応記録

などです。

毎回書く内容は違っても、書類の形はほぼ同じというものがあります。

たとえば日報なら、

日付
作業場所
作業内容
人数
問題点
翌日の予定

という項目があります。

現場担当者が箇条書きや音声で事実を入力し、生成AIが日報形式へ整理することができます。

つまり、

ゼロから文章を書く仕事

を、

事実だけ入力して確認する仕事

へ変えます。

帳票は「全部AI化」より入力部分を見る

帳票を見るときは、

この書類をAIに作れるか

だけを考えません。

どこに時間がかかっているかを分解します。

たとえば作業報告書なら、

現場情報を思い出す
文章を書く
写真を貼る
顧客名を入力
作業時間を入力
PDF化
メール送信

があります。

文章作成だけなら生成AI。

写真なら写真管理システム。

顧客名・作業時間の転記なら自動化。

PDF送信ならワークフロー。

と分けられます。

一つの帳票でも、複数の自動化候補があります。

次に探したいのは「同じ情報を二度入力している仕事」

AI化候補として非常に見つけやすいのが転記です。

たとえば、

紙の日報
↓
Excelへ入力

Excel
↓
販売管理システムへ入力

顧客メール
↓
顧客管理表へ入力

受注システム
↓
経理用Excelへ入力

などです。

一度入力した情報を、人がもう一度入力しています。

これは自動化候補です。

ただし、

転記を自動化する前に、転記そのものをなくせないか

を考えます。

一度入力した情報を最後まで使えないか考える

たとえば、

現場担当者が紙の日報を書く
↓
事務員がExcelへ入力
↓
経理が請求システムへ入力

という会社です。

ここで、

紙→ExcelをOCR化
Excel→請求をRPA化

することもできます。

しかし、

現場担当者がスマートフォンへ一度入力
↓
その情報を日報・集計・請求で共通利用

できれば、さらに簡単です。

つまり自動化では、

入力を速くする

より、

入力回数を減らす

方が効果が大きい場合があります。

実際に「業務の棚卸し→自動化」で大きく減った事例もある

中小企業庁が紹介している製造会社の事例では、AIやRPAを本格導入する前に、まず受注業務を棚卸ししています。

その結果、ルール不足やイレギュラー処理によって42工程まで増えていた業務を、改善によって9工程まで減らしました。

その後RPAを導入し、受注業務時間を75%削減しています。

ここで重要なのは、

42工程をそのままRPAにしたわけではない

ことです。

まず、

不要な工程
曖昧なルール
担当者によって違う処理

を減らしています。

AI化を考える会社でも、この順番が使えます。

3つ目は「毎回似た文章を書いている仕事」

生成AIを使いやすい代表的な業務です。

たとえば、

顧客メール
見積送付メール
納期連絡
作業完了報告
求人原稿
社内通知
会議後の報告
事故報告

などです。

毎回内容は少し違いますが、文章の形は似ています。

たとえば、

「設備故障により納期が2日遅れる。現在は復旧済み。9月5日発送予定」

という事実を入力します。

生成AIが顧客向けの文章へ整理します。

社員は、

内容確認
数字確認
送信

だけを行います。

定型文は「テンプレート+AI」にすると使いやすい

毎回自由に、

「メールを書いて」

と頼む必要はありません。

会社で、

納期変更
見積送付
作業完了
資料不足

などのテンプレートを用意します。

AIには、

今回の情報

だけ渡します。

すると、

会社の文体
必要項目
文章の長さ

をそろえやすくなります。

複数社員が文章を書く会社では、

AIで文章を書くこと

だけでなく、

社員ごとの文章のばらつきを減らすこと

にも使えます。

4つ目は「人が見てチェックしている仕事」

確認作業もAI化候補です。

たとえば、

書類に必要項目が入っているか
前回資料との変更箇所
誤字脱字
請求書に必要情報があるか
報告書を種類別に分類
問い合わせ内容を担当部署へ振り分け

などです。

人は、

書類を開く
↓
見る
↓
問題があるものを探す

という仕事をしています。

AIに一次確認させ、

問題がありそうなものだけ人が見る

ようにできる場合があります。

「100件入力」から「100件確認」へ変えるだけでも意味がある

完全自動化を目指す必要はありません。

たとえば100枚の請求書があります。

現在は、

100枚を見る
↓
金額を100回入力
↓
取引先を100回入力
↓
日付を100回入力

しています。

AI-OCRを使えば、

100枚を読み取る
↓
Excelへ仮登録
↓
人が確認

にできます。

人の仕事は残ります。

しかし、

入力する仕事

から、

確認する仕事

へ変わります。

確認の方が速ければ、十分な効率化です。

「大量の中から探す仕事」も候補になる

AI化候補は作成・転記だけではありません。

探す仕事もあります。

たとえば、

過去の報告書を探す
社内マニュアルから該当部分を探す
過去の問い合わせを探す
過去案件で同じトラブルがなかったか探す

などです。

会社には情報がある。

しかし、

どこにあるか分からない

状態です。

生成AIと社内情報検索を組み合わせれば、

「以前同じ故障が起きたときの対応を探して」

のような使い方ができます。

過去資料が増えている会社では、文章生成より情報検索の方が大きな効果を出すこともあります。

Excelを開いて何をしているかを見ると候補を見つけやすい

小さな会社ではExcelが多く使われています。

そこで、

社員がExcelを開いて何をしているか

を確認します。

入力している。
コピーしている。
集計している。
並べ替えている。
別のExcelへ移している。
メールへ数字を貼っている。

この中には、生成AIを使わなくても自動化できる仕事がかなりあります。

たとえば、

複数Excelの集計
→ Power Query

決まった転記
→ RPA・Power Automate

文章からExcel項目を抽出
→ 生成AI

紙からExcel
→ OCR

というように分けます。

AI化候補を探すときは「AI」という言葉をいったん外す

社員へ、

「AI化できる仕事はありますか?」

と聞いても、

「分かりません」

となりやすいでしょう。

代わりに、

「毎日同じことを入力していない?」

「何回も同じ文章を書いていない?」

「紙を見ながらパソコンへ入力していない?」

「人が一枚ずつ確認している書類はない?」

「毎回探している資料はない?」

と聞きます。

この方が具体的な仕事が出てきます。

AI導入担当者が探すべきなのは、

AIを使える仕事

ではなく、

社員が面倒だと思いながら繰り返している仕事

です。

1週間だけ「面倒な作業メモ」を取る

業務棚卸しといっても、大げさなコンサルティングをする必要はありません。

小さい会社なら、1週間だけ社員に記録してもらいます。

たとえば、

面倒な仕事1回の時間頻度人数
注文書入力3分20件/日1人
日報15分毎日5人
見積メール10分5件/日2人
請求書確認2分200件/月1人
会議議事録30分週1回1人

これだけでも優先順位が見えてきます。

優先順位は「時間×頻度×人数」

自動化候補を選ぶときは、

一番難しい仕事

ではなく、

1回の時間 × 頻度 × 人数

で考えます。

たとえば、

月1回3時間

の仕事より、

5人が毎日10分

使う仕事の方が大きくなります。

5人 × 10分 × 20日なら、

月1,000分
=約16時間40分。

年間では約200時間です。

日報のような単純な仕事でも、会社全体では大きな改善候補になります。

さらに「自動化しやすさ」を加える

時間が大きいだけでは決めません。

たとえば、

業務A
月20時間
毎回同じ形式

業務B
月25時間
案件ごとに全部違う

なら、業務Aの方が先に成功しやすいでしょう。

そこで、

月間時間
頻度
人数
定型性
人の確認しやすさ

を見ます。

小さい会社なら、厳密な点数制度を作る必要はありません。

「多い・普通・少ない」

程度でも十分です。

AI化候補を4種類に分ける

見つけた業務を次の4つへ分けると、導入する方法も見えます。

帳票

日報
報告書
申込書
点検票
注文書

→ 生成AI・OCR・フォーム化

転記

紙→Excel
Excel→システム
システム→Excel

→ OCR・RPA・Power Automate・API

定型文

メール
報告
案内
求人

→ 生成AI

確認

不足項目チェック
分類
差分確認
大量資料から検索

→ 生成AI・文書AI・専用システム

まずこの4つを社内から探すだけでも、かなりの候補が見つかります。

ただし帳票があるからといって自動化するとは限らない

たとえば月に1枚しか作らない報告書があります。

作成時間10分。

これをAI化するために、

設定
教育
運用ルール

を作る必要があるなら、効果は小さいでしょう。

一方、

日報を社員10人が毎日書く

なら効果が大きくなります。

つまり、

自動化できるか

だけではなく、

自動化する価値があるか

まで見ます。

「なくせる仕事」を先に探す

さらに重要なのが廃止です。

たとえば、

Excel Aへ入力
↓
Excel Bへ転記

している。

なぜExcel Bが必要なのか聞く。

誰も使っていない。

なら、

Excel Bを自動化する必要はありません。

廃止します。

自動化では、

  1. やめる
  2. まとめる
  3. 標準化する
  4. それでも残ったものを自動化する

という順番の方が効率的です。

中小企業庁の事例でも、AI・RPA導入前の業務棚卸しによって工程自体を大幅に減らした後、自動化しています。

担当者の「判断」をルール化できるかを見る

自動化しにくい仕事の中には、

担当者しか分からない判断

が含まれています。

たとえば、

「この注文は急ぎ扱いにする」

という仕事です。

担当者に聞くと、

A社なら優先。
数量100個以上なら優先。
納期3日以内なら優先。

というルールがあるかもしれません。

それを文章化できれば、自動化しやすくなります。

逆に、

「長年の勘で何となく」

しか説明できなければ、まずルール整理が必要です。

AI化の前に、人の判断を言葉にする。

これも重要な作業です。

例外が多すぎる仕事は後回しにする

自動化候補を探すと、

一番面倒な仕事からやりたい

と思うかもしれません。

しかし、

顧客ごとに違う
担当者ごとに違う
毎回例外が起きる

仕事は難易度が上がります。

最初は、

入力項目が同じ
文章の型が同じ
確認項目が同じ

という仕事を選びます。

成功してから難しい業務へ広げる方が失敗しにくくなります。

IPAの生成AI導入ガイドラインでも、最初から全社・全機能へ広げるのではなく、小規模に試し、効果や安全性を確認して広げるスモールスタートが示されています。

「人が最後に簡単に確認できる仕事」を優先する

たとえばAIがメールを作る。

担当者が30秒読めば正しいか分かる。

これは導入しやすい仕事です。

一方、

AIが高度な法律判断をする。

社員には正しいか分からない。

これは導入初期の候補としては適しません。

AI化候補を探すときは、

AI出力を誰が確認するか

もセットで考えます。

確認できる人がいない仕事を最初から自動化しない方が安全です。

個人情報・秘密情報が多い仕事は利用ルールも考える

業務としてAIを利用すると、

顧客情報
従業員情報
契約情報
図面
原価
社内資料

などを扱う場合があります。

そのため、

AI化しやすい業務

だからといって、社員が自由に外部AIへ入力するのではありません。

使用サービス
入力可能情報
匿名化
最終確認者

などを決めます。

経済産業省は2026年3月にAI事業者ガイドライン第1.2版を公開しており、安全性、プライバシー、セキュリティ等を含むAI利用上の考え方を整理しています。

小さい会社でも、

秘密情報を勝手に入力しない
重要な外部文書は人が確認する

くらいの基本ルールは必要でしょう。

最初の1件は「毎日30分以上」から探してもいい

何から始めればいいか決まらない場合は、

会社全体で毎日30分以上使っている定型作業

を探します。

たとえば、

注文書入力40分
日報合計2時間
問い合わせメール1時間
写真整理1時間

です。

その中から、

定型性が高い
間違えても人が確認できる

ものを一つ選びます。

これなら効果も測りやすくなります。

AI化候補を判断する表

業務の状態判断
毎日繰り返す候補
複数社員が同じ作業優先度高め
毎回ほぼ同じ帳票候補
同じ情報を二度入力優先度高め
毎回似た文章を書く生成AI候補
紙を見ながら入力OCR候補
Excel間の転記自動化候補
大量の書類を確認AI・文書処理候補
一度入力したデータを再入力連携を検討
目的不明の作業廃止を検討
担当者によって方法が違う標準化を先に
例外が非常に多い後回し
最終判断が重要人を残す
AIの正誤を確認できない最初の候補にしない

最初からAIツールを決めない

AI化できる仕事を探すとき、

ChatGPTを導入したいからChatGPTでできる仕事を探す

という順番にすると、選択肢が狭くなります。

先に、

日報に時間がかかる。

請求書転記が多い。

問い合わせメールが多い。

と課題を決めます。

その後、

日報
→ 生成AI

請求書
→ OCR

メール
→ 生成AI

定型転記
→ RPA

と選びます。

課題→ツール

の順番です。

1業務だけ試して削減時間を測る

IPAの生成AI導入ガイドラインでも、生成AIは技術変化が速いため、利用範囲を限定して試し、効果と安全性を確認するスモールスタートが重要とされています。

小さい会社なら、

注文書入力

だけ試す。

導入前:

1日60分。

導入後:

確認だけで20分。

なら、

1日40分削減。

月20日なら、

約13時間。

これなら導入効果を説明できます。

逆に、

60分
↓
50分

なら、別の業務を優先した方がいいかもしれません。

AI化候補を探す目的は「AIを増やすこと」ではない

最終的に、

生成AI
OCR
RPA
Power Automate

を何種類導入したか

は重要ではありません。

会社にとって重要なのは、

月20時間かかっていた仕事が5時間になった。

社員が転記しなくなった。

現場担当者が日報のために残業しなくなった。

という結果です。

中小企業庁の事例でも、業務の棚卸しとデジタル化によって1,508時間の業務時間削減を達成し、創出した余力を人でなければできない仕事へ振り向けています。

AI化の目的も同じです。

結論|帳票・転記・定型文・確認作業を探せば、自社のAI化候補は見つけやすい

自社でAI化できる仕事を探したいなら、

「ChatGPTで何ができる?」

から始める必要はありません。

社内を見て、

毎回書いている帳票はないか。
同じ情報を二度入力していないか。
毎回似た文章を書いていないか。
人が大量の書類を見て確認していないか。

を探します。

そして、

帳票
転記
定型文
確認

に分けます。

そこから、

生成AI
OCR
RPA
Power Automate
Excel
API・システム連携

のどれが適しているかを考えます。

ただし最初に、

その作業自体をやめられないか。

一度入力した情報を再利用できないか。

担当者ごとのやり方を統一できないか。

も確認します。

順番としては、

業務を出す
↓
不要なものをやめる
↓
同じやり方にそろえる
↓
月間時間を測る
↓
帳票・転記・定型文・確認に分類
↓
適したAI・自動化を選ぶ
↓
1業務だけ試す
↓
削減時間を確認する

で十分です。

AI化する仕事を探すときに狙うのは、

会社で一番高度な仕事

ではありません。

社員が「これ、人が毎回やる必要ある?」と思う仕事。

そこから探すと、小さな会社でもAI・自動化できる業務を見つけやすくなります。

次に読む記事

AIに向いている業務そのものの特徴を整理したい場合は、

「AIに向いている業務・向いていない業務の見分け方|小さな会社向け」

を確認してみてください。

毎日Excelへ同じ情報を入力している場合は、

「毎日同じ内容をExcelへ転記している会社へ|AI・OCR・自動化で減らせる仕事とは」

も判断材料になります。

実際に会社で最初のAI業務を一つ決めたい場合は、

「会社でAIを導入するなら何から始める?最初にAI化しやすい業務の見つけ方」

へ進むと、試験導入する仕事を絞りやすくなります。

出典

中小企業庁|中小企業のデジタル化推進に向けた取組

中小企業庁|2025年版小規模企業白書

IPA|テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン

経済産業省|AI事業者ガイドライン 第1.2版

この記事は、2026年8月時点の中小企業庁・IPA・経済産業省の公開情報を確認して作成しています。