介護事業所ではAIを何に使える?記録・報告・情報共有の効率化

介護事業所でAIを導入しようとすると、

「介護記録までAIに任せられる?」
「申し送りや報告書を短くできる?」
「利用者情報をAIに入れて大丈夫?」
「小さい事業所でも導入する意味はある?」

と迷うことがあります。

結論からいうと、介護事業所では、まず記録・報告・情報共有のような「書く・まとめる・伝える」仕事からAIを使うのが現実的です。

たとえば、

介護記録の文章化
申し送りの要約
事故・ヒヤリハット報告
家族への連絡文
会議議事録
職員向けマニュアル
研修資料
社内通知

などです。

一方、

利用者の状態判断
ケア内容の最終決定
事故原因の確定
医療的判断
緊急時の対応判断

などを生成AIだけに任せるのは適しません。

つまり、

事実を記録・整理する仕事はAI。
利用者を見て判断する仕事は人。

この分け方が使いやすいでしょう。

介護事業所では「介護そのもの」より周辺業務からAI化する

介護職員の仕事には、

食事介助
入浴介助
排泄介助
移乗
見守り
コミュニケーション

など、人が利用者と直接関わる業務があります。

一方で、その周りには、

記録
申し送り
報告
会議
家族連絡
書類作成

があります。

生成AIが最初に効果を出しやすいのは、後者です。

厚生労働省も介護分野の生産性向上について、単純に人を減らすことではなく、業務改善によって職員の負担を減らし、利用者へ質の高いケアを届けることを重視しています。

その中でも、

記録・報告様式の工夫
情報共有の工夫

は明確な改善項目として挙げられています。

つまり、

介護時間を削るためにAIを入れる

のではなく、

介護以外の事務時間を減らし、利用者と向き合う時間へ戻す

という考え方です。

介護記録の文章化はAIと相性がいい

たとえば職員が、

昼食8割摂取
水分200ml
歩行時ふらつきなし
午後は居室で休息
表情穏やか

と入力します。

AIに、

「介護記録として簡潔な文章にして」

と依頼すれば、

記録用の文章へまとめられます。

重要なのは、

AIに利用者の状態を想像させないこと

です。

食事量
水分量
行動
発言
表情

など、実際に確認した事実は職員が入力します。

AIは、

その事実を読みやすい記録へ変える

ところまでです。

音声入力と組み合わせると記録負担を減らしやすい

介護現場では、

ケア後に記録を書くため事務所へ戻る

ことがあります。

スマートフォンやタブレットなどを使い、

その場で音声入力
↓
文字化
↓
AIで記録形式へ整理

という方法も考えられます。

たとえば、

「昼食はほぼ完食。13時ごろトイレ誘導。歩行安定。午後はレクリエーション参加」

と話します。

これをAIが、

食事
排泄
移動
活動

などの記録へ整理します。

職員はゼロから文章を書く必要がなくなります。

厚生労働省も、タブレット端末などを利用して訪問先や事業所外から記録を入力することを、情報共有効率化の方法として紹介しています。

ただし記録内容をAIに「補完」させない

介護記録で避けたいのが、

「自然な文章になるように足りない部分を補って」

という使い方です。

たとえば、

「利用者は穏やかだった」

という情報しかないのに、

「笑顔で他利用者と会話されていた」

とAIが書いてしまえば、実際には確認していない記録になります。

そのため、

入力された事実だけを使用する
不明な情報は追加しない

とルールを決めます。

介護記録は、小説のように文章を良くすることが目的ではありません。

事実を正確に残すこと

が優先です。

申し送りの要約にも使える

介護事業所では、

夜勤から日勤
日勤から夜勤

など、職員間の申し送りがあります。

利用者数が多いと、

全記録を読むだけでも時間がかかります。

AIを使えば、

食事
排泄
睡眠
服薬
転倒リスク
体調変化
家族連絡

など、申し送りが必要な情報を整理できます。

たとえば、

「過去24時間の記録から、次の勤務者が確認すべき変化だけまとめる」

という使い方です。

ただしAI要約だけを読んで原記録を見なくなると、重要情報が抜ける可能性があります。

AIは、

読む量を減らす補助

として使います。

情報共有の「転記」を減らす方が効果が大きい場合もある

介護現場では、

介護記録へ入力
↓
申し送りノートへ転記
↓
会議資料へ転記
↓
家族向け報告へ転記

というように、同じ内容を何度も書いている場合があります。

厚生労働省も、ICTを利用することで各帳票への転記作業を減らせるとしています。

特に、

介護記録
情報共有
請求事務

が一気通貫になったソフトを導入することを効率的な方法として紹介しています。

つまりAIを導入する前に、

同じ情報を何回入力しているか

を見ることも重要です。

単純な転記なら、生成AIより介護記録ソフトやICT連携でなくせる場合があります。

AIと介護ソフトは役割が違う

介護事業所で、

ChatGPTを入れれば介護記録ソフトはいらない

とはなりません。

役割が違います。

介護ソフトは、

利用者情報
介護記録
計画
請求
職員間共有

などを業務システムとして管理します。

生成AIは、

文章化
要約
整理
言い換え

が得意です。

そのため、

介護記録ソフト
+
AI

の組み合わせを考えた方がよいでしょう。

たとえば、

記録ソフトへ入れる文章をAIで整える。

記録ソフトに蓄積された情報から申し送りを要約する。

という使い方です。

事故報告書・ヒヤリハット報告にも使える

介護現場では、

転倒
転落
誤薬
食事
移乗
設備

などについて事故・ヒヤリハット報告を作成することがあります。

職員が、

発生日時
場所
利用者の状況
何が起きたか
初期対応

を入力し、AIで報告書の形へ整理できます。

たとえば、

「15時10分、居室前。歩行中にバランスを崩した。職員が支え転倒なし。外傷なし」

というメモを、

発生状況
利用者の状態
対応

に整理します。

ここでもAIは文章化担当です。

事故原因をAIだけで決めない

AIへ、

「なぜ転倒したと思う?」

と聞けば原因候補は出せます。

しかし、

筋力低下
環境
履物
職員配置
体調
薬

など、実際の原因は現場状況を確認しないと分かりません。

そのため、

考えられる要因を候補として出す

ところまでは使えます。

しかし、

事故原因を確定する
再発防止策を最終決定する

のは現場の職員・責任者です。

ヒヤリハットをまとめて傾向分析する使い方は有効

ヒヤリハットを集めていても、

月末にファイルへ保存するだけ

では改善につながりにくいことがあります。

たとえば1か月分の匿名化した報告をAIで、

転倒
誤薬
移乗
食事
夜間
その他

に分類します。

さらに、

発生時間帯
発生場所
共通する状況

などを整理します。

人が数十件を最初から読む前に、AIで傾向を見つける補助ができます。

そこから、

何を改善するか

は事業所側で考えます。

家族への連絡文にも使える

介護事業所では、

日常の様子
体調変化
行事
持ち物
面会
受診

などを家族へ連絡することがあります。

内容を職員が確認した上で、

「家族向けに分かりやすく丁寧に」

とAIへ整えてもらえます。

たとえば、

「昼食は8割摂取。午後少し咳あり。発熱なし。水分摂取して様子観察中」

という事実を、家族向けの文章へ変えます。

職員ごとに文章の書き方が違う事業所では、表現の統一にも使えます。

ただし医療判断を含む連絡は慎重にする

たとえば、

「この咳なら問題ありません」

「受診は必要ありません」

などの判断をAIに作らせるのは避けます。

介護職員が確認した事実。

看護職等が行った判断。

医師からの指示。

これらをAIで分かりやすく文章化することはできます。

しかしAIが独自に医療的な判断を追加しないようにします。

会議議事録はかなりAI化しやすい

介護事業所では、

職員会議
ケア会議
事故防止会議
委員会
研修

などがあります。

録音や文字起こしを利用し、

決定事項
担当者
期限
継続確認事項

へAIでまとめられます。

たとえば1時間の会議から、

「何が決まったか」

だけを整理する使い方です。

会議後に30分かけて議事録を書いているなら、比較的効果を出しやすいでしょう。

カンファレンスの情報整理にも使える

利用者について、

食事
排泄
移動
認知
睡眠
家族意向

など複数の職員から情報が出ることがあります。

それを、

現在の状態
変化
課題
確認事項

へ整理できます。

ただし、

「この人にはこのケアが最適」

とAIだけに決定させるものではありません。

AIは、

チームで話し合うための情報整理

に使います。

マニュアル作成にも使える

介護事業所では、

入浴介助
食事介助
送迎
事故対応
感染症
災害
新人教育

などのマニュアルがあります。

現場にある既存ルールをAIへ渡し、

新人向け
チェックリスト
Q&A

などに変換できます。

たとえば長い感染対策マニュアルから、

「新人が最初に覚える10項目」

を作る使い方です。

AIが新しいルールを勝手に作るのではなく、

事業所の既存ルールを分かりやすくする

ために使います。

研修資料・OJTにも使える

厚生労働省は介護分野の生産性向上の一つとして、

OJTの仕組みづくり

も挙げています。

AIを使えば、

社内マニュアル
事故事例
ヒヤリハット

から、

研修問題
確認クイズ
新人向け説明資料

を作ることができます。

たとえば、

「この事故報告から新人研修用の確認問題を5問作る」

という使い方です。

教育資料を毎回一から作る負担を減らせます。

社内通知・職員向け文章にも使える

勤務ルール変更
研修案内
感染対策
行事
設備使用
会議案内

など、職員向け文章も生成AIで作れます。

特に、

外国人職員向けにやさしい日本語へ変更

するといった用途も考えられます。

ただし重要なルールや手順は、意味が変わっていないか責任者が確認します。

利用者ごとの情報を探す時間も減らせる可能性がある

記録が増えると、

「最近この利用者は夜眠れている?」

「食事量が落ち始めたのはいつ?」

と過去記録を確認することがあります。

適切な業務システムとAIを連携できれば、

一定期間の記録を要約し、

変化を見つける補助

に使える可能性があります。

ただし、

AIが変化を見つけなかったから問題なし

とは判断しません。

職員が利用者本人を観察することが基本です。

AIに任せるより介護テクノロジーを使う方がいい仕事もある

介護事業所の効率化は、生成AIだけではありません。

厚生労働省・経済産業省は、介護テクノロジー利用の重点分野を拡充し、

移乗支援
移動支援
排泄支援
見守り・コミュニケーション
入浴支援
介護業務支援

などのテクノロジー活用を進めています。

たとえば、

夜間見守り
移乗負担
排泄予測

などはChatGPTでは解決できません。

センサー
見守り機器
介護ロボット
介護記録システム

など専用テクノロジーを使う領域です。

つまり、

文章・整理=生成AI
介護動作・見守り=介護テクノロジー

と分けます。

送迎ルートもChatGPTより専用システム向き

デイサービスなどでは、

送迎ルート

も大きな仕事です。

住所や時間をChatGPTへ入れれば案は出せます。

しかし、

乗車時間
車いす
車両
職員配置
利用時間

など条件があります。

厚生労働省も送迎ルート効率化をデジタルツール活用例として紹介しています。

ここは汎用生成AIへ任せるより、介護・送迎向けシステムを比較する方がよい場合があります。

個人情報・要配慮個人情報の扱いには特に注意する

介護事業所でAIを使うときに非常に重要なのが情報管理です。

介護記録には、

氏名
住所
病歴
障害
服薬
認知症
介護状態
家族情報

などが含まれます。

この中には要配慮個人情報に当たるものもあります。

そのため、

職員が個人の無料AIへ利用者記録をそのまま貼り付ける

ような運用は避けた方がよいでしょう。

まず事業所として、

どのAIを使うか
何を入力できるか
匿名化するか
記録データを外部サービスへ出してよいか

を決めます。

AIに実名を入れなくてもできる仕事は多い

たとえば家族向け文章の下書きを作るだけなら、

「山田花子さん」

と入力する必要はありません。

「利用者A」

でも文章は作れます。

事故報告の文章構成も、

具体的な氏名を削除して利用できます。

AI導入では、

何を入力できるか

だけでなく、

そもそも入力しなくてもよい情報は何か

を考えると安全性を高めやすくなります。

「AIで記録できる」ことと「記録してよい内容」は別

AIを使うと文章を簡単に増やせます。

しかし介護記録は、

長ければよい

わけではありません。

不要な文章を大量に追加すると、

重要な変化が埋もれる

可能性があります。

厚生労働省も、生産性向上では記録・報告様式そのものを見直し、必要性・見やすさ・使いやすさを考えることを推奨しています。

つまり、

今の記録をAIで2倍速く書く

だけでなく、

そもそも必要な記録だけになっているか

を見ることも重要です。

AI導入前に「二重入力」をなくす方が先の場合もある

たとえば、

紙へ記録
↓
介護ソフトへ入力
↓
Excelへ転記
↓
申し送りノートへ記入

しているとします。

この状態なら、

ChatGPTで文章作成を速くする

より、

入力を一度にする仕組み

を作った方が効果が大きい場合があります。

厚生労働省も、情報共有の効率化ではICTによる転記削減を重視しています。

AI導入の前に、

同じ情報を何回入力しているか

を確認します。

小さい介護事業所なら最初は4業務で十分

何から使えばよいか迷ったら、

介護記録の文章化
申し送りの要約
事故・ヒヤリハット報告
会議議事録

くらいからで十分です。

この4つは、

頻度が高い
文章・整理中心
人が最終確認できる

という特徴があります。

大きなシステムを変えなくても試しやすい業務です。

たとえば職員10人なら小さな時短でも積み上がる

職員10人が、

記録作成で1日10分

短縮できたとします。

10分 × 10人
=100分/日。

月20日なら、

2,000分
=約33時間。

実際には勤務日数や業務内容が違うため単純計算どおりにはなりません。

それでも、

1人あたり数分の削減

でも事業所全体では大きくなることが分かります。

介護事業所では、大きなAI導入より先に、

毎日全員が行う小さな事務作業

を減らす方が効果を出しやすい場合があります。

AIを使いやすい仕事・人が判断する仕事

業務AI活用
介護記録の文章化◎
音声メモの整理◎
申し送り要約◎
会議議事録◎
家族向け文章◎
社内通知◎
マニュアル整理◎
研修資料◎
事故報告書初稿○
ヒヤリハット分類○
カンファレンス情報整理○
長期間の記録要約○
事故原因候補△ 人が確認
ケア内容の提案△ チームで判断
利用者状態の最終評価× 人
医療的判断× 医療職等
緊急対応判断× 現場・専門職
ケア方針の最終決定× 専門職・チーム
見守りそのもの専用介護テクノロジー

AIが向いている事業所・まだ別の改善を優先した方がいい事業所

生成AIの効果が出やすいのは、職員が毎日かなりの時間を記録・申し送り・報告へ使っている事業所です。

たとえば、

  • 記録文章が長い
  • 同じ内容を何度も転記している
  • 申し送りに時間がかかる
  • 事故・ヒヤリハット報告が多い
  • 会議議事録作成が負担
  • 家族連絡を頻繁に行う
  • マニュアルや研修資料作成が多い

といった場合です。

一方、

介護記録ソフトが整っていない
紙とシステムで二重入力している
職員間の情報共有方法が決まっていない

のであれば、いきなり生成AIを入れる前に、

記録方法・ICT環境そのものを整理した方が効果が大きい

場合があります。

AIは、非効率な業務をそのまま高速化するだけではなく、

業務そのものを見直した後に使う方が効果を出しやすくなります。

結論|介護事業所では「ケアをAIに任せる」のではなく「ケアの後に発生する事務を減らす」

介護事業所ではAIを、

介護記録
申し送り
事故報告
家族連絡
会議議事録
マニュアル
研修資料

などに使えます。

特に、

事実を職員が確認し、AIが文章・要約・整理を担当する

使い方は導入しやすいでしょう。

一方、

利用者の状態をどう見るか。

どのケアを行うか。

事故原因をどう判断するか。

医療的対応が必要か。

といった仕事は、人が判断します。

厚生労働省も、介護分野の生産性向上を単純な人員削減ではなく、

利用者へ質の高いケアを届けること
職員の負担を減らすこと
チームケアと情報共有を改善すること

として進めています。

そのためAI導入も、

介護職員をAIへ置き換える

という考え方ではありません。

記録を書く時間を10分減らす。

申し送りを5分短くする。

会議議事録を20分早く作る。

同じ内容の転記をなくす。

こうした積み重ねによって、

職員が利用者を見る時間へ戻す

ことが目的です。

小規模な介護事業所なら、

記録
↓
申し送り
↓
事故報告
↓
会議議事録

から試す。

その後、

介護記録ソフトとの連携
情報共有
見守り
送迎
介護テクノロジー

へ広げる。

この順番なら、生成AIで何を効率化し、専用ICT・介護テクノロジーへ何を任せるべきか整理しやすくなります。

次に読む記事

小さい会社・事業所でも生成AIへ課金する価値があるか迷っている場合は、

「小さい会社でも生成AIを導入する価値はある?使った方がいい会社・まだ不要な会社」

を確認してみてください。

利用者情報をAIへ入力してよいのか、職員がどこまで使ってよいのか決めたい場合は、

「生成AIを会社で使う前に決めておきたいこと|入力してよい情報・人が確認する仕事」

も判断材料になります。

ChatGPT等の汎用AIだけではなく、介護記録・見守り・送迎など専用システムまで必要なのか考えたい場合は、

「ChatGPT・Claude・Geminiだけで十分?専用AIツールを導入した方がいい業務との違い」

へ進むと、汎用AIと介護テクノロジーの境界を整理できます。

出典

厚生労働省|介護分野における生産性向上とは

厚生労働省|記録・報告様式の工夫

厚生労働省|情報共有の工夫

厚生労働省|介護分野における生産性向上の取組の進め方

厚生労働省|介護テクノロジーの利用促進

厚生労働省|介護テクノロジー利用の重点分野

厚生労働省|令和8年度介護テクノロジー等による生産性向上の取組に関する調査及び効果測定

この記事は、2026年8月時点の厚生労働省の公開情報を確認して作成しています。